深い霧の森

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長い…長い一日だった。 遠くに見える町並みが、一日前とは全く別の雰囲気をまとっている。 ちょうど24時間前、僕達はくだらない話に笑いながら、この森に足を踏み入れた。 もうあの笑顔を見る事も僕が見せる事もないだろう。 皮肉なものだ。あれ程、生に執着した二人は人間を失い、生に興味を失った僕は人間として生き残った。 まるであまのじゃくだ。あの霧は生にしがみつく者を幽閉し、生を見放した者を解放する。 しかし、その解放は意味を成さない。僕の目には、この世界が一面の霧に包まれているようにしか映らない。
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