桜と君と、うまい棒

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『うまい棒食う?』 そう言って、彼はうまい棒のコーンポタージュ味を俺に差し出してきた。 『あっ、あんがと。』 素直に受け取る。 部活後の高校生にとっては、空腹の気休めにしかならないが、食えるもんならなんでも食う。 『俺さ~…』 本の頁を閉じながら喋りかけてきた彼の声が、急に変わってドキッとした。 『なに?』 『色々悪い噂たってんじゃん。聞いたこと、あるべ?』 『あーー………ま~。』 『…実際こんな髪の色してっしな。』 『……それって、やっぱ染めてん…だよね?』 何となく気になって口から出た言葉。 でも、彼は自分から少し視線を外した。 そして、答えない。 しばし、流れる沈黙。 口がうまいわけではない自分にとって、それは、とてもいずかった。 その沈黙を破ったのは、彼だった。 『俺、もともと髪の色素が薄かったんだ。なのに、中学ん時はいっつも先公に怒鳴られっし、歩いててもなんか知らんにーちゃんに絡まれるしでさー。いやんなって、最初からこれでいーや!と思って、この色にしてんだ。ま~ど~でもい~話だけどな~。』 ゆっくりとした、少し冗談めいた喋り。 俺は、ハッとさせられた。 彼は彼なりに苦しんでいて、必死にもがいていたのかもしれない。 それを知りもしないで、見た目や噂のみで彼を見ていたん自分がいた。 本当は、優しい奴なのかもしれない。 そう思った。 『なぁ澤田君って、何人兄弟?』 『えっ!?急になに?』 あまりに唐突な質問に、少々面食らっている彼。 でも、顔は笑っている。 『いや~なんとなく。で?何人なわけ?』 『………7人。』 彼は、少しはにかんだ様子でそう答えた。 同時に、俺は高鳴る親近感が抑えきれなくなった。
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