入村

5/7
前へ
/21ページ
次へ
車内から出るとまだ6月前半とはいえさすがに夏を感じた どしっとのしかかるようにもやもやと襲いかかる空気と刺すように肌を照らす太陽 なんとも不機嫌にさせる良い陽気だ 「おーーーーーーい」 そんな嫌悪感を感じてる間に向こう岸の誰かが呼ぶ声が耳に止まった 「あんた老川さんかーーー」 向こう岸までは然して距離も無くほんの10メートルも無いほどなので声は比較的聞き取りやすかった 「はいっ、老川ですーーー」 「あーーよかった私小谷一人(おやかずひろ)ですーーー小谷仁の兄のーーー」 小谷さんと自己紹介をしてくれた人はどうやら例の上司のお兄さんらしい 「どうも初めましてーー」 「どうもーー少し待っててください今、船そっちに渡すんでーー」 そう告げると小谷さんは川のほとりの茂みに入った 少し待っていると手漕ぎボートに乗った小谷さんが茂みの中から姿を現した
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加