入村

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船はみるみるうちに自分たちのいる対岸へとたどり着いた 「ごめんなさいねぇ、わざわざ遠くから来ていただいたのにこの有様で」 「いいえ、こちらこそ私たちを待ってずっと待たしてしまっていたようですし申し訳ないです」 「いいんですよいつもやることも無くてぼーーっと茶をすすってるよりよほど健康的ですよ、ん?」 小谷さんが俺の存在に気付いた 「あんらぁ、ずいぶん大きい息子さんだこと、こんにちはぁ」 「こんにちはお世話になります」 そんな感じで軽く俺に続いて母も挨拶をすませ小谷さんの船で川を渡った 持ち物は家具やほとんどの生活用品はもう新居の方に事前に届けてもらっていたので車だけを残していくかたちになった ほどなくして対岸の先程小谷さんが出てきた背の高い草が生える茂みに入って行った そこにはおそらく自分で作ったであろう小さな船着き場があった 「ほぉら、足元、気お付けて降りてくださいね」 立ちあがるとバランスの悪い船から転ばぬよう船着き場へ降りた 続いて父、母、小谷さんとなんとか無事上陸出来たようだ 「んじゃ、ここを上ったとこで少し待っててください、車とってくるんで」 そう言い捨てて小谷さんはゆるやかな土手のようになっている坂を一足先に登って行った
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