引っ越し

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ある日父は、会社から解雇通告を受けた 今のご時世、長く働いてきた会社に突然首を切られるのは決して珍しいことではないだろう、 会社をクビになってしばらくの間は、ハローワークなどに通い職を探していたらしいが、そんな簡単に仕事は見つかるわけもなく、 父は途方に暮れていた。 そんなある日、夕食を囲む場で父が突然こんな事をぼそっとつぶやいた。 「農業を…始めてみようと思うんだ……」 正直驚いた。 都会産まれ、都会育ちの父の口からまさか農業なんて言葉が出るなんて思ってもいなかったからだ。 でもここは都会のど真ん中、家族を養えるような農業が出来る場はそうそうに無い 「なあ親父、農業ったってこの辺じゃあ出来っこないんじゃ、それに、親父に農業なんてできるの?」 「うん、……そうだなたしかにここはコンクリートジャングルだし、そう容易く土地を買ってどうこうなんて、正直父さんにそんな技術も財力も無いよ、だからな――」 少しの間の後申し訳なさそうにこう続けた。
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