暮れる暁

引っ越し

「ここは新規一転、思い切って家を引っ越そうと思うんだ」

「はぁ？」

俺が疑問をぶつける間もなく父は話を続けた。

「それにな、実はもう働き口も見つけてあるんだ、父さんが勤めていた会社の上司のお兄さんが、もう一人じゃ仕事をを続けられないから良かったら助っ人に来てくれないかって」

「どうせ今のままいるよりずっといいんじゃないの？」

そんな賛成意見を述べたのは意外にも母だった。

俺の家は賃貸だ、当然こんな都心だから決して安い家賃ではない、今後のことを見越してここを出るのは痛仕方のないことだと自分にだってわかる

「とりあえず話は解ったけどどこに越すつもりなの？」

「うん、それはな――」