入村

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「がぁっっっ……」 父がいきなり何かをしでかしたような声をあげた。 隣に座っている母も少し様子がおかしい 「どうしたんだ親父ネコでも引いたか」 「馬鹿なことを言うんじゃない!」 すかさず母のお叱りが飛んできた 「はっ橋がない……」 「は?………」 「橋がないんだよ、ほらっ」 体を起こし助席の窓から前方の様子を伺うと、そこには確かにこちら側からあちら側に掛っていたであろう橋の中程あたりがなく両サイドに突き出したコンクリートを残した状態で存在していた。 「別の橋はないの」 「ここから先に行くにはここの橋を渡るか、この逆にある橋を渡るしかないんだしかも渡るには山を越えなくちゃならない、はぁもう目と鼻の先なのになぁ」 はぁ、と深いため息をつく父をよそに、自分はもう目的地に着くのだということに少し楽しみで胸を膨らませていた
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