三章

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今ホテルのラウンジには中川と山崎、山崎の隣には寒さに震えるハナとバスタオルからびしょ濡れの服へ着替えを済ませたアヤノがいる。 「とにかく、一人でいるよりはみんなで固まっている方が安全です、朝になればきっと帰れます。」 みんなを励ますと同時に自分にも気合いを入れる、目の前で殺人が起きたのだ、早く逃げ出したくて気が狂いそうだった… 「朝までって!ケンジを殺した奴がいるかもしれないのにっ!あんた!何かあったら私を守りなさいよ!」 (こんな時でも相変わらずのワガママっぷりだな…) 中川はため息をつき、アヤノに答える 「アヤノさん、恐いのはわかります、ただ今はこうしてみんなで固まっている事が一番安全にいられる最善の方法です、ぼくは朝まで寝ないで見張りしますから。」 中川は無理をしていた、しかしみんなを不安にさせる訳にはいくまいと冷静に話した。 「わ、わかったわよ…」 アヤノが珍しく素直に従う。 「しかし、大変な事になったのぅ。」 山崎が中川にだけ聞こえるように話しかける 「えぇ、ぼくも今すぐ逃げ出したいですよ。」 中川はつい本音が出た。 「テレビとかだと犯人を見つける為に殺人現場を調べたり凶器を探したりするんでしょうけど、ぼくはこんな事件に関わりたくない、自分の身も危険なのに、とっとと帰って風呂上がりのビールが飲みたいですよ。」 中川がうつむきながらつぶやく 「それが賢明じゃよ、この状況では捜査のしようもないからの、生き延びてここから逃げ出す事を最前提に考えて動く方が身のためじゃ…」 中川は目を向けずうなずいた
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