一章

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男は大雨の中車を走らせていた。 日も暮れ田舎道で街灯もまばらな為かかなり視界が悪い。 その上雨で道がぬかるみタイヤが泥を跳ねる。 「ひどい雨だな…」 男は一言愚痴をこぼしながらも先を急ぐ。 車がカーブに差し掛かったその時!急に前からバケツをひっくり返した程の水が車のフロントガラスを埋める。 『ビシャァ―――!』 「うっ、うわっ!」 男は突然の事に驚きブレーキを踏み込む、だがぬかるんだ田舎道の泥はそれを許さず男の乗った車は道を外れて雨の溜まったぬかるみにつっこんでしまう。『ズシャァ―!』 男は前のめりになった身体をゆっくり起こす。 「イタタタッ」 首を押さえながら目を開ける。 「チクショウ、さっき追い抜いていったトラックかぁ?まったく…」 男は気を取り直し車をバックさせようと後ろを見ながらアクセルを吹かす。 『ウウーン、ウウーン』 しかし手応えがなく車はまったく動かない… 「あれっ?」 完全にぬかるみにはまりスリップしてしまっている。 「マジかよ~嘘だろ~」 男の力ない言葉が車内に響く。 仕方なく男は車を降りて助けを求めようと車道に出るが車の気配はまったくない・・・ 「田舎にも程があるだろ、しゃあない、どっかで電話借りるか。」 ちなみにケータイも圏外だったのを男は確認済みである。 少し歩くと男の前にさびれた小さなホテルが目に入った、こんな田舎でホテルが見つかるとはありがたい、そう思い男はその小さなホテルへと入って行った。
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