【26】太古の要塞

1/7
前へ
/188ページ
次へ

【26】太古の要塞

~ナスカ~ 地上絵が連なる広大な大地の地下。 そこに、最近見つかったばかりの『ペレ遺跡』があった。 今回のPV撮影の舞台である。 メイは、日本での出来事をまだ知らない。 「小田さん。イメージ作りはどう?」 遺跡の最深部には、30メートル四方ほどの広い部屋があった。 その一番奥の壁には、たくさんの図形が描かれている。 スタッフたちと構想を練っていたメイが、壁を見つめて立つ小田に話しかけた。 「あぁ。だいたいはね。しかし…なんだろうね。この壁」 「さぁね…まぁ、それは賢い学者さん達に任せましょ!」 メイの心は、完全に彼に傾いていた。 しかし、飛行機の中で彼の話を聞き、その心は永遠に、今は亡き恋人(坂本楓)のものであることを知ってしまったのである。 「少し遅くなったけど、お昼にしましょ」 メイが天井を指差す。 「そうですね。ちょっと外の空気も吸いたいし」 スタッフに告げて、二人は部屋を出る。 迷路の様な通路を地上へと向かって行った。 「小田さん…」 恥ずかしそうなメイ。 「てを…手をつないでもらっていいですか?」 「ハハ、メイさんでも、ここはやっぱり気味が悪いよね。いいですよ。はい。」 ここだけの話、メイが怖いのは、体重計だけである。 そっと差し出された小田の手を握る。 「ありがとうございます」 「どう致しまして。ハハ」 小田も彼女の気持ちには十分気付いていた。 そうは思わせず、また、楓との秘密を話したのは、彼なりの優しさであった。 孤独だった頃。 幸せな人生など諦めていたメイにとっては、それだけでも、本当に幸せだったのである。
/188ページ

最初のコメントを投稿しよう!

125人が本棚に入れています
本棚に追加