【29】エピローグ

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【29】エピローグ

~8月~ 暑さ厳しい真夏の高知。 細い山道を、ゆっくりと歩いていく二人。 バス停のあった国道から離れて、一時間ほどが過ぎようとしていた。 日頃の生活では味わえない緑の風。 過ぎ行く夏を惜しむ様な蝉の声。 彼女は、そんな風景の一つ一つを、心にしみじみ感じ取っていた。 「これがあの(クスノキ)ね。へ~確かに立派だわ」 坂道を登りきったところで、一息ついた。 「ラブ、まだなのかぁ?暑くて死にそうだぜ」 「T2、少し運動不足なんじゃない?」 彼の肉体にとって、運動は必要ないのだが、暑さには弱かった。 「こんなことなら、やっぱりマシンでくれば良かったぜ、全く」 「まぁまぁ、たまにはこうして、清らかな空気を胸いっぱいに吸いながら、歩いてみるのもいいものよ」 「ラブ、おまえこそ、本当にもう大丈夫なのか?」 薄いベージュのショートパンツから伸びる、白く細い脚。 左の太ももと右の足首、そしてTシャツの腕にも1ヶ所、痛々しく包帯が巻かれていた。 「心配してくれるの?大丈夫よん。んじゃ、帰りはおんぶしてもらっちゃおうかな」 ヘブンとの最終決戦の末、身も心もボロボロになったラブ。 まだ完全ではないが、動ける様になった彼女は、じっとしてはいられなかったのである。 「ほら、着いたわ」 楠を曲がった正面に、優しいたたずまいの小さな家があった。 「鍵はポストの裏に…と、あったわ!ほんとにあった」 鍵を握りしめ、目を閉じるラブ。 いくつもの想いが、彼女の胸に押し寄せる。 (帰って来たよ) (メイ) ラブは、永遠の絆が刻まれた家へと、ゆっくり鍵を差し込んだ…。 (関連小説:『永遠の絆』)
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