【29】エピローグ

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「ガラガラ」 玄関を開ける。 家の中には、どこか懐かしい匂いが漂っていた。 「ごめんください。おじゃまします」 ゆっくりと中に入る。 家の中は、誰かかが管理している様で、きれいに掃除もされていた。 「へぇ・・・なかなか(おもむき)あっていいじゃねぇか」 「無理しないでいいわよT2。あなたに『おもむき』なんて似合わないわ」 「確かに。って、おい!いいじゃねぇか、たまには」 微笑むラブ。 素足になって、お茶の間に上がる。 テーブルに置かれたアルバム。 二つ並んだ椅子。 その向かいにある壁を見つめるラブ。 じわじわと、その瞳から涙が、頬を伝って流れ落ちる。 桜の木の下で、優雅に微笑む女性。 メイの祖母、多恵の写真。 学生服姿で、凛々しく立つ少女。 メイの母、美紗の写真。 そしてその隣で、にこやかに笑う赤ん坊。 母である美紗が、わが子を手放す夜に撮った、メイの写真であった。 ラブは、その板の間に正座し、深々と頭を下げた。 多恵、美紗、メイ。 3人の涙が染み込んだ床に、ラブの涙が落ちる。 「美紗さん。芽衣(メイ)は、とても立派に生きました。守ってあげられなくて、本当にごめんなさい。でも、彼女は、代わりに、私を守ってくれました。彼女の想いは、私の中にあります。これからもずっと、一緒にいさせてください。メイ・・・ありがとう」 色々なことが思い出され、涙が止まらなかった。 暫くの間、T2は、拳を握り締めて、ラブのその姿を見つめていた。 「ラブ、もうそろそろ行こう。家族に水を差しちゃいけねぇぜ」 そっとラブを抱き起こす。 「ありがとう。T2、あれを」 T2が鞄から風呂敷包みを取り出し、テーブルに置く。 「美紗さん。残念ながら、彼女の遺骨はありません。変わりに、これをお返しします」 包みを開く。 それは、美紗が子供の頃、父親から授かり、自分の形見として娘のメイに送ったカメラであった。 そのカメラをテーブルに置いて、二人は家を出た。 玄関前で、改めて家に向かい、二人は深々と頭を下げた。
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