第0001話 伝説《でんせつ》の玉璽《ぎょくじ》

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延康(エンコウ)元(建安二十五。220)年10月初旬 献帝(けんてい)(劉協(リュウキョウ))は、高御座(たかみくら)の玉座に座り、曹皇后(曹憲(ソウケイ))は、御帳台(みちょうだい)浜床(はまゆか)(ふく)していた 曹貴人(きじん)(曹節(ソウセツ))、曹美人(びじん)(曹華(ソウカ))は、2人の一段下の土敷(つちしき)(しとね)に座って居る 魏王(ぎおう)曹丕(ソウヒ)(字:子桓(シカン))、太子中庶子(たいしちゅうしょし)司馬懿(シバイ)(字:仲達(チュウタツ))は(うやうや)しく(ひざまづ)き、下を向いたまま話し始めた 司馬懿「この司馬懿、(おそ)(なが)ら時勢を(おもんぱか)りますに、漢は此処に衰退し、今、正に禅譲の時。…御献替(ごけんさん)の程を。この御奏聞(みそうぶん)(かしこ)み畏み申し上げ(たてまつ)りまする……」 献帝「魏王…。今、司馬懿は何と………?」 曹丕「陛下。畏れ乍ら直奏(じきそう)をさせて頂きます。只今、御召(おめ)しに()られて居ります高御座を、私めに御下賜(おかし)いただけますでしょうか?。周りの者共が、何度も薦めて来るので混乱して居ります…」 曹皇后「…魏王(あにうえ)ッ! 。コホッ…」 異母兄の言葉を遮る曹皇后、それに続く異母妹の曹貴人と曹美人 曹貴人「魏王よ、誰の御陰で今の曹家の隆盛が在るとお思いですか?」 曹美人「…子桓(シカン)兄様(にいさま)ッ」 後漢末期、曹丕が献帝に禅譲を迫り、献帝后で曹丕の妹である曹皇后、曹貴人、曹美人の3姉妹が同じ様な境遇の中、この伝国璽を兄の曹丕に投げ付ける事となるのは、まだ、誰も知らない… …そう、歴史は繰り返すのである。
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