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「!?」
女性は驚いて本から顔を上げ、ガイアヴィスを凝視する。
ガイアヴィスは転がり出たまま硬直してしまい、しばらく女性と見つめあっていたが、女性は本を置いて近寄って来て、手を差し出した。
「あの……大丈夫ですか?」
「……」
差し出された手の意味が分からず眉根を寄せると、女性は苦笑しながら引っ張り起こしてくれた。
「いつまでもそこに寝転がっていらっしゃるおつもりですか?」
「いや……」
「どうしてこのような場所にいらっしゃるの? 迷ってしまわれたのかしら」
女性はガイアヴィスの頭に手を伸ばしてゴミを払うと、可愛らしく笑った。
「でも嬉しいですわ。お兄様やお手伝いさん以外の方と会えるなんて。どちらからいらしたの?」
「俺は……」
ガイアヴィスが言葉を濁すと、遠くから男の声が聞こえてきた。
「美奈紀(みなぎ)、居るか?」
女性は振り返って細い手を口元に持っていく。
「あら、お兄様の声だわ」
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