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それから来る日も来る日も、ガイアヴィスはこっそりあの屋敷に忍び込んでは美奈紀を見守っていた。
殺さなければならない生き物のはずなのに、どうしてか殺す気が起きない。
今日も見ているだけで、ばれないうちに帰ろうとした時だ。
「――――今日も話しかけてはくださらないのですか?」
「!」
美奈紀は本から目を上げずにそう言った。
ガイアヴィスは驚いて身を固くし、美奈紀は優しく微笑みながらこちらに視線を向けた。
「こっちにいらして下さいませんか? 今日は誰も来ませんし、安心なさって」
信用してもいいものか迷ったが、ガイアヴィスはゆっくり茂みから這い出し、美奈紀の前に歩み寄った。
近くで見ても、やはり彼女は美しすぎる。
銀の髪や雪の様に白い唇、艶やかな唇も勿論そうだが、何よりもその存在自体が美しかった。
「どうぞ、こちらにお座りになって。今お茶を淹れますわね」
美奈紀はテーブルの上にあるポットから手早く紅茶を淹れ、それをガイアヴィスの前に置いた。
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