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「益良男入ってこい」
いつの間にか出席を取り終えたらしく神崎先生が僕の名前を呼んだ。
「はい」と返事をして中に入ると視線が自分に集中した。
圧迫感凄まじいな。
ちょっとどころか普通に怖い。
不安になって神崎先生を見ると何か言えと言う風に合図を出された。
意を決して前を見る。
「益良男冥利です。ちょっとした事情で学校に来るのが遅れました。よろしくお願いします」
軽くお辞儀をして頭をあげるとこそこそ話している生徒たち。
なんかやだな……。
「じゃあ、益良男席に着け、空いてるのは……斉木の隣だな」
斉木? なんか引っ掛かるな……特別珍しいわけでもないのに。
すぐに動かない僕に席の位置が分からないと思ったのか――まぁ、分からなかったんだけど――神崎先生が位置を教えてくれる。
「一番左側の一番後ろだ」
「はい……」
早速、自分の席に行く。
幸いなことに自分を引っ掻けようと足が出ていることはなかった。
安心して前を見ると隣の席の人が窓の外を見ていた。
その横顔にどこか見覚えのある気がした。
近づくごとにその考えが大きくなる。
自分に席についてそれに気がついた彼が僕に視線を向けた時、無意識に口が動いた。
「カ……ズ……?」
彼は驚いた風に目を見開き、僕を五秒ほど見つめた。
「冥利……なのか?」
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