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「…それにしても、綺麗だな……」
土方は女を抱き寄せる。
「これだけ着飾れば誰でも綺麗になれます」
「お前は着飾らなくても綺麗さ」
そう言うと土方は彼女の顔に自分の顔を近付ける。
が、女はそれを手で防ぐ。
「ダメですよ。紅が落ちますから」
「また引き直せば良いじゃねぇか」
女の手を固定して土方は荒々しく彼女の唇に噛み付く。
彼女は無理矢理彼から離れるとすぐに鏡を見た。
「…取れちゃった……。もう、引き直さなきゃいけないじゃないですか!」
ムスッとした表情で女は紅を取り出した。
「お前が綺麗なのがいけねぇんだよ」
土方は満足げに微笑んだ。
彼女の化粧直しが終わると、二人はほぼ無言で共に宴の場へと戻った。
「近藤さん、お雪を連れて来たぜ」
土方はそう近藤に告げると女を部屋にあげる。
一段と盛り上がる一同。
「雪と申します。どうぞ宜しくお願いします」
女は艶やかに笑って頭を下げる。
そしてまた盛り上がる一同。
雪はいろんな者へお酌をしてお酒を頂く。
「お雪殿は京の者では無いんだな?」
「はい。江戸の辺りの出身でございます。京の言葉は難しいのであまり使わぬようにさせて頂いてるのですが、もし皆様が京の方が良いとおっしゃられるのなら変えさせて頂きますが…?」
「いや、お雪殿が気楽にいれるのならこのままで良い!」
酔っ払って気の大きくなった者はそんなことを言って彼女にベタベタと触ったりする。
そのような者たちを適当にあしらってとある人物の所へ行く。
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