【26】帰納の敵は凶の友

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「お酒があまりお進みになられていないようですが…如何なさいました?」 その人物はチラッと雪を見る。 「…なんだお前か」 彼は息を吐いた。 「……どなたかと間違われましたか?」 クスリと笑う女に彼は鼻で笑う。 「そうじゃない。お前が春江だったのか、と言ったんだ。馬子にも衣裳だな」 「…何をおっしゃっているのかわかりませんけど?」 「私は女に興味はない。酒なら酔うまで飲んでやるさ。お前は土方副長のとこにでも行け」 目障りだと男は言う。 「なぜ土方さんのところなんですか?」 「副長の口元に紅が付いている。恐らくお前のそれと同じものだろ」 女はすぐに土方を見る。 ここからではわかりにくいが確かに紅が付いているような気がする。 「…だからと言って私が春江さんという方とは限りませんよ?」 「何を言っている。一応私は、一度お前と副長に惚れたんだ。すぐにわかるに決まっているだろう」 「…副長様の件は初耳ですが……」 「それと何が武田先生送別の宴だ。こんなもの開かなくても死んでやるのにな。これを考えた奴にそう言っておけ」 「…もう全てお気付きなのですね」 「ああ。そりゃそうだろう。それに少し前にも山崎さんに余命宣告を受けたしな」 自嘲する武田を華は真っ直ぐ見る。 「…どうして薩摩邸へ行かれたのですか?頭の良い貴方ならこうなることも想定出来たはずですが?」 「…西洋化だ。もうここでは私の時代は終わりを告げようとしている」 そうだろう?と武田は華に尋ねる。
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