【26】帰納の敵は凶の友

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確かに彼の言う事は正しい。 最近新撰組でも洋式化が進み、甲州流軍学を得意としていた武田は居場所が無かった。 きっと密会が無かったとしてもいつかは新撰組に捨てられる運命だったのかもしれない。 しかし未来がどうなっていたかは誰もわからない。 華が何も言えずしばらく黙り込むと武田はわかりやすく舌打ちをする。 「女のくせに黙り込むな。迷惑だ。さっさと副長のところへ戻るか男装して出直してこい!」 武田の言葉で何かに気付いた華は彼に頭を下げると土方の元へ急いだ。 「…副長様、申し訳ございませんでした」 深々と頭を下げる華に土方は諦めに似た溜息が漏れる。 「……やはりアイツにゃ下手な小細工は効かなかったか…。気にすんな。想定内だ」 「…それが……、想定外なことがありまして…」 「…想定外、何があった?」 「………まず私だとばれました。それに武田様は死ぬ気でいらっしゃいます。そして山崎さんに余命宣告された、と…。あとは…」 華は言いかけて口を閉ざした。 それを土方は不思議そうに見つめた。 「…あと何だよ?」 「………いえ、気のせいでした…」 華に違和感を覚えながらも土方は先程の彼女の報告を聞き、考え更ける。 隣で聞いていた近藤も次はどうなるのか興味津々な様子で見ている。 「……春江、俺はこのまま作戦を決行しようと思う。お前の意見も聞かせてくれ」 「私も、副長様のおっしゃる通りこのまま続行する方が良いと思います」
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