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それから約五ヶ月ほど経った。
季節は冬に差し掛かろうとしている。
その頃、平隊士たちの間で妙な噂が回り始めていた。
新撰組から離れ、御陵衛士を結成した伊東が薩摩と共謀して近藤の首を狙っている、と。
その頃、御陵衛士として伊東と共に抜けたはずの斎藤一がよく新撰組屯所に出入りしていた。
そのこともあり、平隊士たちの間では伊東の噂が現実味がおびてきた。
彼らがちょうどその噂をしているところに彼らの憎き監察方が近くを通った。
華とあまり入隊した年が変わらないが若干遅い者たちが彼女を囲む。
「おい、春江!」
「…春江さん、ね。…で、なんですか?」
春江は体調が悪いのか、少し顔が青白い。
「お前、局長や副長に贔屓されてるからわかるだろ?」
「斎藤組長が最近帰ってきてるのはどうしてなんだ?」
「やっぱり伊東参謀の噂と関係あるのか?」
三人が順に尋ねて来る。
「…………え?…斎藤さん、帰って来てるんですか?」
本当に初耳らしく華は嬉しそうに目を輝かせる。
「…なんでそんなに目がキラキラなんだ?」
「春江、そんなこと言って…本当は理由を知ってるんじゃないのか?」
「局長に口止めでもされてんのか?」
他の者には言わないから教えろと三人はしつこく言っていると何者かが四人に近付く。
「…あれ?春江さん、いつの間に平隊士のみんなと仲良くなったんですか?」
稽古が終わったところなのか汗だくで上半身が裸の状態の沖田が楽しそうに声をかけた。
「おおおおおきたたいちょっ!」
ピシッと敬礼をする三人。
「はい、どーも」
ニコニコな沖田。勿論作り笑顔。
「……見てる方が寒いんで服着て下さい」
華が迷惑そうに言う。
「えー?僕は暑いから良いじゃないですか。それより春江さん、最近体調でも悪いんですか?」
「あー、確かに体調悪いっていうか…わかりませんが多分風邪だと思います」
「季節の変わり目ですからね。気をつけて下さいね。他の皆さんも!」
では、と沖田は一同に背を向けて自室へ向かった。
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