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「あ、沖田様に斎藤さんのこと聞けばよかった…」
華はそう言うと沖田を追いかけて行った。
「…なんであいつ、斎藤隊長の名前出したらあんなにキラキラしてんだ?」
「てか春江、沖田隊長に体調の心配してもらえるなんて羨ましいな…」
「……もしかして春江、男色なんじゃねぇか…?」
三人は顔を青くした。
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沖田を追った華だが少し前にいる彼の様子がおかしい。
「……ゴフッ…ゴホッ」
明らかに渇いた咳をしている。
「…………沖田様…っ!大丈夫ですか?沖田様っ!」
確かに前から薄々気付いてはいた。
土方もずっと気にかけていた。
今、やっと核心に変わった。
しかしそれは遅かった。
目の前の青年は自らの口を抑えた手に血液を付けていた。それも少量ではない。
「騒ぐな!…僕は大丈夫。いつものことです」
沖田はその血液を自らの手ぬぐいで拭く。
しかし沖田の手ぬぐいはすぐに真っ赤に染まり役目を果たさなくなってしまう。
「これ、使ってください」
華はすぐに自分の物を差し出す。
沖田は一瞬迷ったようだが静かに受け取り、残りの血液と口元を拭った。
「…これ、新しいの買って返しますから」
「そんなこと気にしないで下さい」
「………それと、このことなんですが…」
「誰にも言いません。お約束します」
沖田の言葉を遮るように華が言うと彼は少し笑った。
「…春江さんは間者だからな、その言葉、信じられないですね。あーあ。重大な秘密握られちまった…」
味方にも知られてないのに…と沖田は肩を竦めた。
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