【26】帰納の敵は凶の友

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しばらくすると七条の辻に数人の人影が現れる。 藤堂平助、鈴木三樹三郎、篠原泰之進、服部武雄など七名の者が伊東の亡きがらの前で手を合わせた。 その後彼らが伊東を連れて帰ろうと簡単に話し合い亡きがらに手をかけるその時、大勢の人間がどこからともなく現れた。 ざっくり40名はおりそうな感じである。 その中には見覚えのある顔も多数ある。 やはり新撰組だったか…。 御陵衛士の七名は刀を抜いた。 すると新撰組の者たちは一斉に飛び掛かった。 明らかに人数的に御陵衛士側は不利だ。 しかし新撰組側は甘く見すぎていた。 思った以上に時間がかかっている。 服部は刀を二本持ち、いわゆる二刀流の使い手である。 彼は民家を背に、向かって来る元同志の敵を二本の刀で次々に倒していく。 真っ赤に染まっていく地面。 鉄臭くなる現場の中で永倉と原田はある人物を探す。 どこを見ても彼の姿が見当たらない。 彼らの中ではある不安が過ぎる。 「…もしかして平助、もうやられちまったか?」 「………んな訳ねぇっつーの。ほら、探す…ぞ、って、………おい、あれ…!!!!!」 永倉が指差す先には藤堂が何者かに斬りかかっているのが見えた。 二人は藤堂に近付く。 どうやら彼の相手は戦う気が無いらしく攻めることなくただ守ってばかりいる。 「…ねぇ、華ちゃん。全然面白くないんだけど?」 藤堂が言う。 「私も面白くないよ?」 相手、則ち華が答える。 「じゃあ本気で来てよ?」 「そういう意味じゃないんだけどな…」 溜息混じりに華は言う。
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