【26】帰納の敵は凶の友

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「…なんで平助、華と戦ってんだ?」 「………知らねぇよ…。とりあえず俺達は華の助太刀…するか……」 原田と永倉は二人の元へ急いだ。 「華ちゃん、なんで本気出さないの?華ちゃんの実力があれば俺なんか余裕で倒せるんじゃないの?」 挑発する藤堂だが華は無言で刀を受ける。 「おい、平助!お前、久し…ぶ、り……だな………」 永倉は藤堂を見て言葉を失う。 今の藤堂は童顔で華を追いかけ回し性格もちょっと子供っぽい藤堂ではなく、敵を相手にしている時の『魁先生』の顔だった。 藤堂は永倉の声に反応してチラッとそちらを見るがその目には元同志という感情は感じなかった。 永倉と原田は何も言えずに押し黙った。 「…3対1かよ……。やってやるよ!ほら、華ちゃんも全力出して。新八つぁんと左之も刀持ってるだけじゃあ意味ねぇよ。いいから皆、早く来いよ!」 藤堂は思い切り声を荒げると勢いよく華に斬り掛かる。華は一瞬遅れその隙に藤堂は彼女の左肩を斬ると赤いものがジワジワと滲み出ている。 「…ウソダロ……?」 原田たちは驚きの余り動けずにいた。 「どうしたの華ちゃん?しばらく見ない間に弱くなったんじゃねぇの?」 鼻で笑うように藤堂が言うと華は左肩を一瞥した後、小さく笑った。 「…確かに弱くなったかもね……」 彼女は刀を握り直す。 肩が痛み、一瞬顔をしかめたがそのことを忘れる為かのように強く刀を握る。 その一瞬後、華は藤堂の後ろにいた。
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