【26】帰納の敵は凶の友

44/44
前へ
/553ページ
次へ
朝になり、戦いは終わった。 惨い現場から数十人の男たちは引き上げようとゾロゾロと歩きはじめる。 改めて見回せば遺体がいくつか転がっている。中には体をバラバラにされた遺体もあり、無残である。 二刀流の服部も新選組に多大な被害をもたらしたが、原田の槍で絶命をした。 この油小路の変は新選組最後の内部抗争と言われている。 鈴木、加納たちはうまく逃げ切り後に再び新選組に関わることになる。 ******************** 「…へぇー、じゃあ斎藤さんは副長様の命で間者をやらされてたんですね」 数日経ったある日、華は久々に斎藤と談笑していた。 「…やらされ……まあ確かにそうなんだが…」 上手い言葉が見つからんと斎藤は困ったように笑う。 「やらされてたで良いんですよ。実際本当にやらされてたんですし! …それにしてもさすが斎藤さんですね。よく逃げて来れましたね」 「ああ、平助が手伝ってくれた」 「平助ちゃんがっ?」 華は驚き目を見開く。 「あいつが『早くこれ持って逃げなよ!』と言って俺に御陵衛士の資金の一部を握らせたんだ。平助いわく、俺は金に困り御陵衛士の金に手を付けた為逃げたことになっているらしい」 なるほど、と華は押し黙る。 すると斎藤は優しく彼女の頭を撫でる。 「お前が気に病むことではない。あいつは変態だからな、お前に殺られて本望だったと思うぞ」 斎藤は冗談ぽく言うと立ち上がった。 「…そういえば平助からお前に伝言を預かっていた。 『華ちゃん、土方さんとお幸せに。でもあまりいちゃついてるとヤキモチ妬くからね。でも俺、華ちゃんと友達になれて良かったよ。ありがとう華ちゃん!』だそうだ」 では俺は戻る、と言い残し斎藤は自室へと戻った。 『華ちゃんは自慢の友達だからね。あんなに美人で天才で可愛くて強くて絵が上手ででもちょっと鈍感で…土方さんが大好きな華ちゃんが大好きなんだ。そんな華ちゃんと友達って俺、凄くない?』 斎藤は御陵衛士時代、藤堂が斎藤に笑顔で話したことを思い出し、小さく笑った。
/553ページ

最初のコメントを投稿しよう!

585人が本棚に入れています
本棚に追加