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「あー、むかつく!こっちが謝ろうとしてんのに何あの態度?話したくないだ?こっちもあんなおじさんに話すことなんてないよ!」
華がそう叫ぶのを斎藤がなだめる。
「落ち着け、副長は本心で言った訳ではな…」
「本心じゃなかったら何?」
「………………」
今の華には斎藤の説得すら意味がなかった。
「あ、そうだ!斎藤さん確か今日非番でしたよね?もしよかったら一緒にお買い物行きませんか?」
「ああ、確かに今日は非番だが…、俺と行ってもつまらないんじゃないか?」
斎藤がそう尋ねると華はそんなこと無いと笑顔で言うのでちょっとでも彼女の気が紛れるのならと了解した。
二人で街に出る。華は女の格好で、すれ違う者は皆が振り向くほどの美しさ。そんな彼女は斎藤の一歩後ろを歩いている。それはもう、若い夫婦のようで事情を知らない者が見たらとても微笑ましい。斎藤は周りの視線に困ったように俯いた。
華は斎藤を連れ回し、空はもうオレンジ色になっていた。
「斎藤さん、今日のお礼に何かプレゼントさせて下さい!」
今はご機嫌な様子な華が笑顔でいう。
「いや、俺は大丈夫だ」
斎藤が笑顔で答えるとご機嫌だった彼女の顔がむすっとする。
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