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彼女は次の言葉で近藤を更に驚かせた。
「…もちろん男装だけじゃここにいる新撰組の皆さんを騙しきれないのはわかっております。なので私は頓所にはあまり近付かないようにして報告の時だけ局長様や副長様にお会いする。それでもダメでしょうか?」
綺麗な茶色い瞳が近藤を見据える。
「……なるほど。それなら新撰組内でも女がいるという噂は広まらないという訳か…。」
近藤は考え込むように目をつぶり腕を組んだ。
「…俺も彼女には細心の注意を払います。局長、どうかお願いします!!!」
山崎が土下座をすると横で彼女も彼と同じように頭を下げた。
「…うーん。そこまで言うなら俺は認めてあげたいんだが…、歳がなぁ…。新撰組は実質あいつが指揮をとっている。俺はその横で偉そうに威張っているだけだ。」
「…では、とりあえず局長様の許可を下さりませんか?そしたらきっと副長様はお許しになられると思います!!!」
彼女は頭を下げたままだがしっかりした口調で近藤に話をした。
「…そういうことなら。
しかしもし歳が君を許さんくても俺は知らぬからな?それで良いのなら俺は許可しよう!」
近藤が優しい声でそう言うと2人は少し顔を上げた。
「…ありがとうございます!!!」
「ありがとうございます!では早速彼女を連れて副長のとこに行って参ります!」
山崎は少年のように笑うと彼女を抱えて立ち上がった。
「…あっ!!ちょっと待ってくれ!」
近藤は2人を呼び止めた。
「…なんでしょうか?」
山崎が不思議そうに尋ねると近藤は立ち上がり優しい表情で彼女の目を見つめた。
「……君、名前を聞いていなかったね?
俺は新撰組局長、近藤勇という。」
山崎に抱えられたまま彼女は近藤に微笑んだ。
「私は…春江華(ハルエ ハナ)と申します。」
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