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いつものように
おばあちゃんは人形を作るために
工房へ行っていました。
私もその少年の人形に
話しかけていました。
「今日はね、私の誕生日なの!だからおばあちゃんとお祝いするの。」
「…………」
返ってくることのない返事。
その日私は涙を抑えることが
出来ませんでした。
幼い私でも人形はしゃべらないことを
理解していたのにそれがとても
悲しかったのです。
私の両親は私が話し掛けても
返事をしてくれなくて、まるで
私の存在を否定するかのように……
「…………おい。」
一瞬耳を疑った。
聞いたことのない声…
まさか…
「え…………?」
涙でいっぱいの顔を上げた。
そこには私を見下ろす少年の人形がいた。息をしている、瞬きをしている。
「泣くなよ。」
頭をポンポンとたたく。
するといきなり頬っぺたをつねられた。
「俺様の服が汚れる。」
その少年の人形は
俺様だったのです。
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