0人が本棚に入れています
本棚に追加
ああ、それもきみが用意してきたのだった。
儀式は始まり、とうとつに終わった。
めくらましのような炎がひるがえり、すぐに凪いだ。
そして、扉が閉じた。
ぼくは慌てた!
きみが走る音。
きみのたてる声。
階段室に囲まれた板敷きの床と、学校のリノリウムの床。
学校の張り詰め格子の床。
一斗缶をぶちまけたように、飛沫の散った、ぼく。
「呪う!」とどこか遠くできみのさけぶこえ。
‥呪う?
廊下を走るぼく。
階段を上る。
きみをさがす。
階段を下る。
きみをよぶ。
明るい。
暗い。
暑い。
寒い。
時間の緩慢。
描いた細胞の残滓が、並べて描いた『L』のような軌跡が、腐敗する。
びくびくと何かのかげが動く。
‥これはきみとぼくの夢なのだと思った。
すべて、早回しの。
早回しの夢の飛び散る、飛び散る飛沫の赤。
残照の紅。
いや、こんなに明るいはずない、こんなに赤いはずない‥遠い夜の階段を上る。
遠い夜の階段を下る。
ああ、ぼくはまるで燃えているみたいにあつい。
きみはどこ。
この廊下は、この階段はいつまでつづくの。
遠い。
了
最初のコメントを投稿しよう!