vol.1 人殺し

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ドクターは見事に心理を揺さぶりかけた。動揺したいわおを宥めながらも煽り、脳裏に3億円を焼き付かせた。 「・・・たった一つの意見とは、あなただけがこの場に居合わせばいいのですよ」 そう言って、ドクターは視線を蹲っているベンの方へ誘導した。 いわおは完璧に冷静さを失い、ドクターの言葉に理性を壊されていた。 いわおはいきなり、ベンからナイフを抜き取り、清水へと襲い掛かった。 二人とも命のやり取りに必死だった。いや、3億円の為に。 ベンの時と同様揉みくちゃになった。 清水は足を滑らし、いわおが襲い掛かった。 しかし、清水は床に転げ落ちていたパソコンでいわおの頭を強打した。 ナイフを落としたいわおは、頭を抱えるように倒れ込んだ。 すると、 「この場に清水さんしかいないとしたら3億円はあなたのものになりますよ。ほらあの3億円が・・・」 再びドクターが揺さぶりかけた。いわおにした時と同様に。 清水はドクターに操られるが如く、パソコンでいわおを殴打し続けた。 いわおの意識があろうと無かろうと、何度も何度も・・・ そして、清水は最後の一発を食らわせ立ち上がろうとした。 その瞬間、 ドクターは、自分が常に所持しているメスで清水の頸動脈を切断した。 清水の首から大量の血が噴き出し、その場に倒れ込んだ。 恐らく即死だろう。 「クックック・・・はっはっはっ」 ドクターは高笑いを始めた。そして僕の方を振り向き、 「後は君だけになってしまったね。てつくんだっけ?若いのに気の毒だな」 そう言うとニタニタしながら僕の方に近づいて来た。
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