5人が本棚に入れています
本棚に追加
ベンが落ちているナイフを拾いながらフラフラと立ち上がり、おもむろにドクターに向かって突っ込み出した。
グサッ
ドクターの背中にナイフが刺さった。
「さ、3億円は誰にも渡さな・・ぃ」
そう言うとベンはドクターにもたれるようにして倒れ込んだ。
ドクターもまた、その場に蹲った。そしてそのまま二人は動かなくなった。
僕は何がなんだか判らなくなり、恐くてたまらなかった。
「な、何でこんなことになったんだ。ディベートって何なんだ!」
僕が独り言のように喋っていると、
バタン
ドアがいきなり開いた。
ようこだ。ようこが待ち望んだかのように颯爽と戻って来たのだ。
「どうやら決着が着いたみたいね。あら、あなた確かてつ君よね。へ~少し意外だね。あなたが残るなんて」
まるでこうなるのが解っていたみたいな口調だった。
「その目は戦意喪失って感じね」
ようこがそう言うと僕の耳元で、
「あなたがリタイアすれば全て終わるわよ。もしリタイアしてくれるならば、ディベートについて教えるわ。ここで会いましょう」
そう言って僕のポケットにメモを入れた。
僕は静かに頷いて部屋から出て行った。
ようこはニッコリ微笑むと、
「結論を言うわ。人殺しとは自分の感情が膨れ上がった時に生まれてくる衝動であり、私たち人間の根底でもある欲求の一部であるわ。よって誰にでも人殺しになることができる」
と、叫び出した。
すると、どこからか声が聞こえてきた。
「人殺しは人間の欲求の一部か・・・素晴らしい。そなたを今回のディベートのヒーローと見なす。賞金として3億円を授けよう」
ようこは今回のディベートのヒーローとなった。
最初のコメントを投稿しよう!