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「テーマは人殺しだそうだ。ディベートと考えると、‘人殺しができるか、否か’と考えてみてはどうだろう?」
ベンと名乗るスーツを着た人が話し出した。
顔立ちもよく、身なりも品があり、いかにもやり手のサラリーマンといった感じだ。
「法治国家である限り、人殺しは必ず法に触れるだろう。法を犯せば必ず罰せられる。私にはできないと言いたいね」
清水と名乗るおっさんが話し出した。評論家っぽい語りだ。
「人間の感情はそんなに単純なものではないわ。感情が奮起した場合、理性を超えることがあると思う。私は起こりえると思う」
ようこと名乗る女が言った。今回参加メンバーの中で唯一の女性だ。喋り方からしてかなり頭がキレそうである。
「私は外科医であるが、医者の立場から言えば、できないと言える。人の命を救うことがどんなに大変か身をもって体験している。そんな私がどうして人殺しなんてできようか」
白衣を着た男が言った。
「フン、過程なんかいくら出してもきりがないさ。人殺しとは結果論なんだから。できるか、否かと問われればできないと答えるが、時代背景にもよる。戦争であればやらなければならないしな。私はできると言える」
キーボードを叩きながらいわおと名乗る男が話し出した。身なりからオタクとも取れるが、エンジニアか何かだろう。
てつ(こいつら・・・この状況みて何とも思わないのか。見ず知らずの人間がこんな所に集められ、人殺しについて討論しろだと。まず、そこを突っ込む所だろ。それに賞金の額、明らかに高すぎるだろう。これは裏に必ず何かあるな)
僕はこのおかしな状況に戸惑いながらも分析を始めた。
「君はどう思うかな?」
不意にベンが僕に話しかけてきた。
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