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「では、できないとおっしゃる方に伺います。もし、あなた方の愛する方が殺されたとしたらどうしますか?復讐とまではいかないにしても、少なくとも殺人犯に殺意を抱くのではないですか?」
ベンが提案を出してきた。
「確かに殺意は抱くかもしれません。しかし、だからと言って行動に移すかと言えば、また別の話になります。個の感情のまま生きていけば、国は、人は崩壊してしまいます」
清水が反論した。
「フン、奇麗事だな。今の若者がそんな産な考え方をしていると本気で考えているのか?社会へ不満、ストレスへの弊害、自我の苦痛さなど要因は様々でも奴らの残虐さは過去の比ではないさ」
いわおがかなり威圧的なしゃべり方で言った。
いわおと清水がかなりヒートアップしてきた。
「理性を壊すモノがあったらどう?」
ようこが話の流れを変えてきた。
「人間である以上理性が必ずブレーキをかけてくれるわ。でももし、何らかのはずみで型が外れてしまったら、人は誰でも人殺しに豹変するんじゃない?」
「ふ~」
突如ドクターがため息を漏らした。
「静脈破裂の患者を見たことがあるかい?止血をしようとしても大量の血が流れ出てきて、自分の服が真っ赤に染まるんだよ。患者は呼吸困難になり、現場はかなり緊迫した状態になるんだ。そんな中でどうして人殺しができようか。
人であるならばどうにかして助けようとするものさ。死の淵から救った患者の家族の笑顔ほど素晴らしいものはないよ。
ドクターが言った。
「フン、自己満だな」
いわおが軽く煽ってきた。
「フン、医療ミスを犯したとしたら、どうするんだ。隠ぺいや秘匿をしている医者はたくさんいるさ。自分の地位、財産そして世間体を考えれば、人はいつでも豹変するさ」
「てつ君の意見も聞きたいな」
再びベンが振ってきた。
「・・・人を殺すということはその人の人生を背負わなければならない。いろいろな状況があったとしても、自分を正当化させているだけならば殺さない方がいいと思う。誰にも命を奪う権利なんてないのだから」
「確かに誰にも命を奪う権利は存在しないね」 」
ベンが言った。
「フン、若造が知った口をきくな」
いわおが言った。
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