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一方ドクターは、
(このディベートのルールは一つの結論を出すこと。もし仮にこの場に私しかいなければ私の意見が結論となる。
私しかいなければ・・・)
そんなことを考えながらナイフを見つめていた。
皆3億円の出現により明らかに感情に変化が現れてきた。
そして、
「いい加減にして下さい!」
ベンがいわおを突き飛ばした。
「な、貴様!暴力を振るったな!」
いわおはそう叫ぶと、おもむろにナイフを掴みベンに突き付けた。
皆ディベートで頭に血がのぼり、冷静さを失っているようだ。
「ちょ、やめてください!」
僕は思わず叫んだ。
その時、
「バンっ」と机を叩き、ようこが立ち上がった。
「哀れね」
そう一言だけ残して部屋から出て行った。しかし、彼女の目はとても冷ややかな目をしていた。
「フン、降りたい奴は降りればいいさ。私は何がなんでもヒーローに成ってやる」
いわおが叫んだ。欲望が全面に出てきた感じだ。
その瞬間、ベンがいわおの手を掴みナイフを払おうとした。両者とも揉みくちゃになった。
そして、
グサッ
明らかに鈍い音がした。
ベンがうずくまり始めた。ナイフがベンの腹部に刺さったのだ。
「うわぁ~」
清水が叫び出した。「ち、違う。これは事故だ。そ、そうだ。正当防衛だ」
いわおはかなり動揺しだした。そこへドクターが、
「大丈夫です。今のは確かに正当防衛です。ここにいる誰もが証言してくれます」
「そ、そうだろう。俺は悪くない」
「しかし、刺してしまったことも事実です。やはり警察に捕まるかもしれません」
「な、なっ・・・」
「ですが、あなたが3億円に近づいたのも事実です。このディベートのルールのを覚えてますか?たった一つの結論を出せばいいのです
そう、たった一つのね・・・」
そう言って視線を3億円の方に誘導した。いわお、そして清水までもが3億円が頭から離れなくなった。
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