vol.1 人殺し

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一方ドクターは、 (このディベートのルールは一つの結論を出すこと。もし仮にこの場に私しかいなければ私の意見が結論となる。 私しかいなければ・・・) そんなことを考えながらナイフを見つめていた。 皆3億円の出現により明らかに感情に変化が現れてきた。 そして、 「いい加減にして下さい!」 ベンがいわおを突き飛ばした。 「な、貴様!暴力を振るったな!」 いわおはそう叫ぶと、おもむろにナイフを掴みベンに突き付けた。 皆ディベートで頭に血がのぼり、冷静さを失っているようだ。 「ちょ、やめてください!」 僕は思わず叫んだ。 その時、 「バンっ」と机を叩き、ようこが立ち上がった。 「哀れね」 そう一言だけ残して部屋から出て行った。しかし、彼女の目はとても冷ややかな目をしていた。 「フン、降りたい奴は降りればいいさ。私は何がなんでもヒーローに成ってやる」 いわおが叫んだ。欲望が全面に出てきた感じだ。 その瞬間、ベンがいわおの手を掴みナイフを払おうとした。両者とも揉みくちゃになった。 そして、 グサッ 明らかに鈍い音がした。 ベンがうずくまり始めた。ナイフがベンの腹部に刺さったのだ。 「うわぁ~」 清水が叫び出した。「ち、違う。これは事故だ。そ、そうだ。正当防衛だ」 いわおはかなり動揺しだした。そこへドクターが、 「大丈夫です。今のは確かに正当防衛です。ここにいる誰もが証言してくれます」 「そ、そうだろう。俺は悪くない」 「しかし、刺してしまったことも事実です。やはり警察に捕まるかもしれません」 「な、なっ・・・」 「ですが、あなたが3億円に近づいたのも事実です。このディベートのルールのを覚えてますか?たった一つの結論を出せばいいのです そう、たった一つのね・・・」 そう言って視線を3億円の方に誘導した。いわお、そして清水までもが3億円が頭から離れなくなった。
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