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「任務を遂行する。」
「…………。」
無表情な拓也の言葉に口元は無言のまま笑みを形作り続けている。
自らの問いに対する返答への感想を述べるわけでも、表情を変えるわけでもなく、
ただ先程と変わらぬままの表情で無言で拓也を見る。
「もう用件が無いなら、俺は報告に行くが?」
数十秒間、拓也は無表情のまま口を開く気配の無い青年を見ていた。が、再び男の時のように踵を返すと今度こそ森の外に向かって闇に溶け込むように消えた。
「任務を遂行かぁ。」
『人を殺める』
という事さえ任務のためならいとわない少年の消えた先を見据えながら青年が呟く。
「良いんだか、悪いんだか。」
柔らかく、冷たい笑みを浮かべたまま青年は月が光を届ける事さえしてくれない夜空を仰いだ。
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