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そんな退屈しのぎで一番酷かったのはつい最近で、あたしの高校受験での話である。
※※※※※※
『ねえ秋ちゃん。秋ちゃんは俺の大嫌いなもの何だったか覚えてるよね?』
『は?』
寝転びながら入学願書の下書きを書いている、同じように寝転んであたしの髪の毛を構っていた彰が突然そんなことを言ってきた。
『だから俺の嫌いなものは?』
『なんで今その質問するのか意味わかんないし』
『は?いいから答えろよ』
ヘラヘラした顔と口調だったはずのそれらを無表情にかえ、あたしの髪の毛をギチリと掴む。
突然の豹変と痛みに小さく呻きながら彰の求める答えを言ったら、それに満足したのか再度ヘラリとだらしない笑みを浮かべた。
『あ、ご褒美にその願書出しといてやるよ』
『え?別にいいよ…』
『いやいや愛しの秋ちゃんの役にたてるならこれくらいどうってことないさ!』
※※※※※※
こうやって平凡であるあたし、笹川秋は本来希望する(偏差値も学校の雰囲気も普通な)高校を無理矢理兄と同じ高校に変えられ、今日入学式を迎えようとしています。
そう。
偏差値がとんでもなく低く、昨年度まで男子校だった『黒河高校』に。
今年度から共学になった黒河高校、通称黒高(クロコウ)には女子生徒はあたしを含め五人。
ああ、絶望を感じずにはいられません。
(彰に願書すりかえられたのに気付かないとかあたしどんだけバカなんだよ!)
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