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昨晩も優太の父親が帰ってきたのは10時を回ってからだった。
試合があって朝も早いのだから、と母親に何度も早く寝るように言われたが、優太はどうしても父親を待ってお願いしたいことがあった。
父が帰ってくると、優太は小走りに玄関まで行って
「ねえ父さん。明日の試合見に来てくれよ。」
と、くたびれたスーツを着て、靴を脱いでいる父親の背中に向かって言った。
父親の仕事が忙しいことも知っていたが、6年生最後の大会でやっとレギュラーとして試合に出られることになったので、小さい頃よくキャッチボールの相手になってくれた父親にどうしても晴れ姿を見てもらいたかったのだ。
優太の後を追って母親もゆっくりと玄関まで出てきた。
「お父さんは忙しいんだからわがまま言わないの。お母さんが見に行くから。」
靴を脱ぎ終えた父親は、振り返って
「明日は何とか都合をつけて見に行くよ。」
と言って、優しく笑うと優太の髪の毛をくしゃくしゃと撫でた。
「約束だよ。」
優太は照れくさそうに父親の手を払って、嬉しそうに笑うとそのまま自分の部屋に戻ってすぐに眠りについた。
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