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「……よかったですね…。」
はたして、少年の言葉は娘に言ったのか…私に言ったのか………。
「うん。伝えに来てくれて、ありがとうね。」
娘の笑顔。
多分、これが最後になるだろう………。
私の涙は床につくまえに蒸発してしまっている………。
「………ではこれで…。」
「うん。じゃあね。」
「ありがとうございます。本当に…。
主人に…よろしくお願いします………。」
二人に見送りされて、少年は…。
「はい。」
少年は力強くうなずいた。
「(では、行きますよ。)」
少年が小声で話してきた。
私はうなずき、立ち上がる。
もうここにはいられない。
「では。」
少年が一礼して、ドアを開ける。
私は、もう二度と会えない二人を脳内に焼き付けた。
もう…ここには………もどれないから。
少年は長めにドアを開けてくれた。
私はこの温かい部屋を出る。
私にはもう、迷いはなかった。
二人とも………。
ゴメン。
いままで…ありがとう。
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