あの味をもう一度

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「だから用件だけ話せばいいだろ? 僕疲れてるんだけど?」 さすがに僕も限界だった。 意味のない話はもういい。 「どーせあれだろ? またあのオッサンがどうとか…」 「そ、それより、昨日の仕事はどうだったわけ?」 …あからさまに話題を変えてきやがった。 「清水さんか? 別にいい人だったけど。」 「あの人のこと、どう思う?」 どう思うだって? …仕事について話すなんて、ナツにしては珍しい。 そりゃいい人そうだった。 けど、そんな答えじゃナツが満足しないことぐらいわかってる。 「………。」 沈黙ざっと30秒ほど。 ナツが思い切ったように話す。 「あの人、いい人だったね。」 「…僕の葛藤を返せ。」 「何言ってんの?」 「ほっとけや。」 「だから、いい人だったねって。」 「そうだな、このノゾキ野郎。」 「その日の仕事が早上がりだっただけ。 ただの暇つぶし。」 こいつ、悪趣味。 「で? 清水さんが?」 「あんないい人、いるんだね。 人間、見直したよ。」 「だろ?」
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