少年

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少年は、道に立ちつくす私をベンチまで連れていき、座らせてくれた。 「私は確かに死んだ。 道路の真ん中で、引き返したのがいけなかったんだ。」 「………。」 「なのにどうして…。 ということは、ここは…。」 「…ここは天国ではありませんよ。 みなさん思い出すとそう言いますけど、紛れも無く、現世です。 それだけは言うことができます。」 「君は…、誰だ。私を迎えに来たのか。」 この少年、確かに、どこかで見た気がしたんだ。 最近になってよく見るようになったのは、……そういうことか…。 私の死期が近かったからか…。 「迎えに…少し違いますね。」 「違う?どう違うんだ?」 「僕はあなたを導きに来たんです。 あなたが、これから進む道を、お教えするために…。」 「君は…。」 「その仕事をするものを、シニカミと言います。」 「死神?」 「シニカミです。」 …同じようなものじゃないか。 どう違うというのだ。 「死神は死者の魂を刈るものです。シニカミとは…。」 「私のようなものを導く…と?」 「はい。」 少年は薄く笑った。 この少年はたまに大人びた笑いをする。 「より正確に言うと、僕らが導きに行くのは、事故や自殺で死んでしまい、自分のおかれている立場がわからない人なんです。 つまりあなたのような。」 それで…。 「君がいなかったらどうなる?」 「僕がいなければ、そのまま現世に居続け、一定の日数を越すと、地縛霊となるんです。 ラッキーでしたね。」 「私はあれからどうなった? たしか病院の前でひかれて、それから…。」 「即死です。」 少年はキッパリと言い放った。 だが、焦らされることがなく、むしろよかった。 「それで、私の体は?」 「見に行きましょうか?病院へ。」
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