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2つのコーヒーが暑さで温くなっちゃいそうだった。
「近くに住んでるんですか?」
さり気なく掛けた一言に、彼は澄んだ瞳でァタシを見つめた。
「そこのアパートですよ。」
「ァタシは今日引っ越してきたんです。そこのマンションに。」
「良かったらコーヒー飲みませんか?ちょっと温くなっちゃったカモだけど(笑)」
「ありがとう。こっち来れば?」
彼は少し微笑むと、ベンチをペンペンと叩いてァタシを呼んだ。
その誘い方は何だか初めての気がしなかった。
私はちょこんと彼の隣りに座ると缶コーヒーを差し出し、こう話し始めた。
「ァタシ成美って言います。宮坂成美。ァナタは?」
「俺は鷹梨圭吾。成美ちゃんはまだ学生なの?」
「成美で良いですよ。ァタシはアパレル関係の仕事してます。っていっても来週からですけどね…」
そう言ったァタシは少しうつむいた。
「何か忘れたい事でもあるの?」
圭吾はそう言うと、ちょっぴり切ない笑みを見せた。
「どうして?」
「だって人は何か忘れたい事がある時、今迄の環境を捨てて新しい環境に飛び込もうとするんだよ。そうする事で、忘れようとするんだ。」
「…図星ですね(汗)」
「悪い事じゃないょ。でも忘れる事が必ずしも良いとは言い切れない。忘れちゃダメな時もあるし、受け入れる事で成長するんだよ。」
大人な彼の考え方に、ァタシは安らぎを覚えた。
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