始まり。

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「自分でも現実逃避なのは分かってるんです。ただ…」 思わず声を詰まらせた。 「何を忘れたいとか、別にそんなんじゃなくて…」 圭吾はァタシの表情を読み取ったのか、それ以上は何も聞かなかった。 「初めて会った俺に何もかも話そうとしなくて良いよ。」 確かにそうだった。 初めて会った人間にこんな暗い話をされたら、ァタシなら困ると思った。 ここは話題を変えなきゃ… 咄嗟に出て来たのは、捻りも無い言葉だった。 「圭吾さんは今日はお休みなの?」 「いや、俺は夜からの仕事なんだ。」 「じゃあァタシと真逆な生活ですね(汗)」 「まぁね。でもこうして成美ちゃんと話してる。頑張って早起きして良かった(笑)」 少しずつ圭吾の言葉がァタシの心の錆を取り除いていくのが解った。 圭吾の言葉は魔法みたいだった。 初めて会い、初めて言葉を交わしたにも関わらず、何処か懐かしい…そんな感覚に包まれていた。 「そういえば圭吾さんはいくつなの?」 「29。」 「えっ!?マジ?」 「何?もっとオッサンに見えた?(涙)」 「違くて、25位に見えたから…ァタシと6コも違うんだ(汗)」 「じゃあ成美は23かぁ。」 「あれ?急に強気だ(笑)」 「俺、そうゆうとこズルイから(笑)成美も圭吾で良いよ。」 屈託の無い笑顔。 ァタシには無い純粋さを圭吾に感じた。 彼にもァタシの笑顔は自然に見えただろうか… 他愛もない話をしていると、気付けば陽も落ちかけていた。 「じゃあ、また明日ね!」 「おいっ!俺をどんだけ暇人扱いだよ(笑)」 そう言いながらも、圭吾は満更でもない顔だった。 こうしてァタシと圭吾の可愛い公園デートは幕を開けたのだった。
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