彼はまた知る。進化した世界を

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ー人間、きっかけは単純なものさー どこかで聞いたか読んだかの言葉が頭をよぎる 何かを始めるのはそんなものだろう。周りにつられて、体のため、気分転換のため…探せば幾らでも出そうだが、彼には見つからなかった 日々の生活を豊かにする趣味が… 「まあ、普通そうだよなぁ…」 アパートの中で一人呟いた。 もちろん誰にいうでもなく、空間に消えていくのを認識した上の独り言だ それを発した者の身体はそれなりの筋肉がついていて、頭は綺麗に刈り込まれた短髪。 それが彼、菱崎 直澄だ 「帰るついでに趣味も見つけなさいか…」 頭を描いて纏めてあった荷物を手に持ち、部屋を出た 「やれやれ…荷が重い」 今は5月。日差しは強くなりつつある。帽子も必要だろう 駅に歩きながら、彼は悩むきっかけを思い出す 「…趣味が読書だなんて嘘臭いぞ」 勤務先が異動となり、身上調書を書いたが、とある項目で引っかかった 「それなりに読んでいます。例えば…○○とか」 映画にもなった時代小説を上げる 「…それは有名だろ。他には?」 目の前の班長がーそれくらいなら読書とは呼べないー呆れた目を向ける 「他にもー」 さっきあげた小説のシリーズに違う時代小説シリーズを数件上げて、昔から読んでいたIF戦記小説を止めることなく続けて… 「分かった。もういい。それでいこ」 班長は呆れた顔して止めた。こちらとしても有り難い 「ほんっとに読んでるな…呆れたよ」 顔を見ればわかります。とは言えなかったが、班長には読まれたらしい 「これで何度目だ?」 「さあ?聞く人みんなに答えましたので」 どれほどの人に言ったか分からない位だ 「…まあそれは置いといて、明日から学生は休暇だ」 「そうですね」 「嬉しくなさそうだな?」「いえ、嬉しいです。久しぶりの実家ですから」 なら… 前置きを置いて続けた 「…ひとつ趣味を見つけてこい。お前への課題だ」 「はあ…」 困ったが仕方がない返事 「もう休暇に入っていいぞ。彼女とかと羽目を外しすぎるなよ」 「いませんのでご心配なく」 即座に返答した。そんな事が合ったら有り難いだけだ 「なら帰れ。ここを閉めるから」 ………そんな事があり、電車に揺られる中、考えながら目的地に向かっていた
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