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そして同時に拓馬は帰る家を失ってしまった。
母は拓馬を捨て、その男と同居を始めたのである。
仕方なく拓馬は施設で生活をすることになり今に至るのだが……。
その母も今はいない。
金がなくなると同時に男に捨てられ、結局自ら命を絶ってしまったのである。
施設に変わった拓馬は、誰にも心を許さず、施設で生活する他の者たちに干渉もしなかった。
前に住んでいた場所とは学区が違うから、中学は転校したが新しい学校でも誰とも話しをせず、完全に浮いた存在であった。
ただ……誰にも心を許す気はないが、人生を悲観して投げているわけでもないから、将来の為に勉強はした。
傷害事件を起こした身ではあったが、無事に高校は受験出来て合格した。
新しい生活のスタート。
それでも拓馬は変わらずに新しい友人を作ろうとはしなかった。
新しく通った中学から進学していた者は当然はなから近づかなかったのだけれど、
前の中学から進学して来た者が、傷害事件を起こして相手を半殺しにしたことを大袈裟に吹聴して回ったものだから、
誰も拓馬に話しかけるものはいなくなった。
虐められているわけではないのに、誰からも相手にされず無視されている。
怒らせると半殺しにされる相手には、誰も関わり合いたくないのだ。
ただ……イジメのように誰かに不快なことをされることはないから、それは楽だった。
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