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陽菜は服の上からでもガリガリに痩せているのが分かるほどで、顔中のアザが痛々しかった。
正直誰とも関わり合いたくないけれど、自分と似た境遇の少女に少なからず同情を覚えた拓馬は、
仕方なく山形の願いを聞き入れてやることにした。
そして陽菜は転入試験に合格し、拓馬と共に学校に通うことになったのである。
拓馬と同じクラスになった陽菜は、担任教師に紹介されて自己紹介をさせられた。
もじもじとして、ぼそぼそと喋る陽菜の声をクラスメイトたちは聞き取ることが出来ない。
それでも陽菜にしてみれば、人前で喋るだけでも精一杯なのだ。
最初の休み時間には、彼女の周りに人だかりが出来た。
次の休み時間にも……。
しかしそれ以降は誰も彼女に近づかなかった。
なぜなら気さくに話しかけるクラスメイトに対して、陽菜は終始無表情でほとんど喋らなかったからである。
陽菜にしてみれば、クラスメイトの問いかけに精一杯答えたつもりだったのだが、
ろくに学校にも行かせてもらえず、人との触れ合いを知らなかった上に、
いつも顔色ばかり伺って生きてきたから、質問してくるクラスメイトにも、何をどう話せば機嫌を損ねないのかが分からなかった。
それより何より陽菜は笑ったことがなかったし、笑い方が分からなかったのである。
ガリガリに痩せ細り、笑わない陽菜は、次第にクラスメイトから自然と遠ざけられてしまった。
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