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此処は死を迎えた者の魂が訪れる場所、三途の川。その岸部にはいつからか彼岸花が咲くようになり、辺りを赤く色だたせている。
……訪れた人が此処を三途の川ではなく、彼岸と呼ぶようになった原因でもあるかもしれない。
とは言ったものの、実際に此処(彼岸)を訪れる者の中で〝人〟と呼べるモノはそういない。
あの世の入口とはよく言ったものだ。正に此処は死んで魂だけに成ったモノが訪れる〝あの世〟。
そんな場所で身の丈程の鎌を片手にふらふらと放浪する女性が一人いた。
彼女の名は「小野塚 小町・オノヅカ コマチ」。魂とは違い、ちゃんと手足がある人型の存在。
彼女の職業は死に神。彼岸に訪れる魂を川の向こうへ渡す仕事をしている。
彼女曰く、死に神と云っても造りは人間とそう変わりはないらしい。……人間のように疲れたり、不服を抱いたり、不満も悩みだってあるそうだ。
そんな彼女の最近の悩みは魂に関連する事らしい。
何が嬉しいのか、最近の霊魂は元気がいい。ゆらゆらとその場に留まっていてくれたら仕事も簡単なのだが、こうも移動を繰り返されたら……。
……追いかけるこっちの身にもなってほしい。
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