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その後、噴き出した貧乏巫女の事は忘れ、若者の恥ずかしい台詞をも微笑んで受け止める人生の達観者、30代後半らしいオールバックがよく似合うマスター狩野さんが経営する店に今日は珍しいことに先客がいた。
20代全般の若者。6人の団体客は店の出入り口から見て左側の隅に固まってばか騒ぎしている。
……霊夢から聞こえた舌打ちはこの際、聞かなかった事にしよう。
「――マスカリ! 酒…と後何か腹に溜まる物!」
霊夢が右端のカウンター席にいる狩野さんに簡潔すぎる注文をした。……勿論、狩野さんは微笑みで了承する。
因みに〝マスカリ〟とは『マスター狩野』の略称で愛称であり、店の名前――俺達三人の中での話――でもある。
「あんたねえ…もう少し女の子らしくしなさいよ。――あ、マスカリさん熱燗ある? じゃあそれで」
渋ッ! アリス、お前はおやじか。
「俺は――え? おー流石マスカリさん。…アリス! ちょっとトイレいってくるわ」
「はいはい。ちゃんと手洗いなさいよ」
肝心の俺は――というと、勝手に窓際の席に腰を下ろした霊夢を追いかけるアリスに声を掛け、一旦席を外した。
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