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「うぅ……」
酷い頭痛と共に目が覚めた。
最初に見えたのは、青い空。
目の前いっぱいに広がる空ではなく、ビルとビルの間で申し訳なさそうに身を狭める、細長い空だ。
背中に感じる、ざらざらとした固い感触。
どうやら俺は、コンクリートの地面の上に横たわっているらしい。
「あ! 目が覚めましたか?」
右側から女の子の声が聞こえた。
顔をそちらに向けると、そこにはコンクリートの上でなぜか正座している、中学生ぐらいの女の子がいた。
白いワンピースを身につけた細い身体。
少し癖のある長い黒髪。
低い鼻と、化粧っ気のない顔。
そして俺の顔の真横には、ピンク色のひざ小僧がある。
今の状況に、頭がついていかない。
ここはどこだ?
なんで俺はこんな所で寝てるんだ?
ってか、この子、誰?
「…………あんた、誰?」
とりあえず、目の前の人間に対する疑問が、真っ先に口から飛び出した。
女の子は、両手を胸に当てて、ほっと安堵の表情を浮かべた。
「良かった……。大丈夫みたいですね。……あ、あの、わたしは桐沢良乃(きりさわよしの)って言います。えーっと、偶然ここに通りかかったら、あなたが倒れてたので、その、様子を見てたっていうか……」
オドオドと説明をする女の子。名前は桐沢というらしい。
俺が倒れてたって?
なんでまたこんな所で。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ」
「あ、はい。ごめんなさい」
別に謝らなくてもいいけど。
とりあえず俺は上体を起こした。
「ヅッ!」
途端に身体中から鋭い痛みが発した。
「あがッ! く、う……」
「だ、大丈夫ですか!?」
桐沢が心配そうに手を伸ばすが、どうしたらいいかわからないというように、中途半端な位置で手は止まる。
痛みが治まってから自分の身体を見ると、着た覚えのないロンTの上から、腕に白い布が巻かれていた。
その布には見覚えがある。というより……。
目の前の少女の、着ている服を見る。
白いワンピース。
その裾は破れて、短くなっていた。
腕に巻かれている布は、破れたワンピースと同じもののように見える。
俺の視線を受けて、桐沢は恥ずかしそうに顔を赤らめ、破れたワンピースの裾を隠した。
何だろう。状況はよくわからないけど、お礼を言っておいたほうがいい気がする。
「あー……。そのう……、あ、ありがとう」
「いえ……、そんな」
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