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桐沢の顔はますます赤くなった。
本当に何なんだ、この状況は。
頭の中を整理する。
俺の名前は乾托真(いぬいたくま)。どこにでもいて平凡過ぎる、高校2年生だ。
バスケ部で、特技はダンクシュート。
趣味はギター。とか言えたら格好イイなって思ってる音楽音痴。
父親と母親と俺の、家族3人で東京に住んでいる。
1人いる兄貴はもう働きに出ていて、今は1人暮らししているらしい。
次に、今の状況をもう一度確認する。
両側を高いビルに挟まれた、暗い路地裏。
なぜか出血している腕。
よく見ると腕だけでなく、身体の至る所から血が出たり、青く腫れたりしている。
そして目の前にいる女の子。
「…………」
「…………?」
じっと見ていると、ニコッと笑って首を傾げた。ちょっとかわいい。
考えれば考えるほど、ますます訳がわからない。
ここは、首を傾げているこの子に聞くことにしよう。
小学校の先生も、「わからないことは恥ずかしがらずに人に聞きなさい」って言ってたし。
まさかこんな事態を見越した助言だったとは思わないけど。
「あの、桐……沢?」
年下にさん付けもおかしいと思って、呼び捨てにした。
「はい、なんですか?」「…………」
……何を聞こう。
呼んでから考えるなよ、と自分でツッコんだ。
「えーっと。……じゃあ、ここってどこ?」
ありきたりな質問から始めてみた。
「どこと言われても……、どう答えたらいいか……」
「ほら、どこどこの近く、とか」
「うーん……」
顎に手を当てて、真剣な顔で考える桐沢。
しばらくたって、ぽんっと手を叩いて、左後ろのほうを指差した。
「こっちのほうに、きれいな公園がありました」
「いや、それじゃわかんないから」
俺を何だと思ってるんだ。
「じゃあどう答えたらいいですか?」
少し拗ねた顔で聞いてくる。
「もっと大きい建物とかさ、近くの駅とか」
「わたし引きこもりですから、そんなのわかりません」
「…………あ、そ」
そんな堂々と言われても……。
……あれ?
引きこもりがなんでこんな所にいるんだ?
「ほかに何かありますか?」
聞いてみようか……。
いや、そんなこと聞いても意味ないか。
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