命懸けの伝言

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…………。 ……ああ。 筋肉男に殴られそうになった時とか、さっきこいつに桐沢をさらわれた時になった“あれ”の事か。 「俺と同じような奴は、他にいるのか?」 この際、自分が何でそんな事になったのかはどうでもいい。 問題は、自分に危険を及ぼす存在が何なのかだ。 『間引き屋』とかいう組織の中に俺みたいなのがいるなら、警戒しないといけない。 「…………さっきから何の確認なんだよ……。これは…………」 俺にもほとんど聞こえない小さい声で、中原が唸った。 「アンタが助けたあいつ! あいつがそうだろうが! 人一人担いだままビルとビルの間を飛び跳ねる化け物だよ!」 桐沢が……? 初対面じゃないと思ったら、実はか弱い女の子でもなかった? オールバックに脅されて震えてたのは嘘って事か? 俺は桐沢に騙されてたのか。それとも今、こいつに騙されてるのか。 どっちだ? 「――他には怪我してもすぐに治る奴とか、神経を好きなようにいじれる奴もいるって聞いた。あとこの近くに、人の心を読める奴が住んでるって……」 勿論、桐沢の事を信じたい。いや、信じてる。 でもこいつも、嘘をついてる感じがしない。 あくまで直感だし、俺の直感がどこまで信用出来るのかわからないけど。 でもそれを言うなら、桐沢だって嘘をついてたとは思えない。 「また無視かよ……。大体全部アンタの方が知ってるじゃんか。何でこんな事……、――って、待てよ……」 何にしても、桐沢の事が全くわからない。 信じる信じないは後にして、こいつに桐沢の事を聞いてみよう。 「次は桐沢……あの子の事だ。あいつは」 「――ふふ、ふふふふ」 不意に中原が笑い出した。 俯いて笑う様が、かなり不気味だ。 「ん?」 「ふふはは、ははは、あは、あーはっは! あーはっはっはっはっはっは! ……」 顔を上げた。 でも、やっぱり不気味だ。 何だ? 神経張り詰め過ぎて壊れたか? 「はははっ、あはははっ、そういうことか。ふふ、よくわかった。質問タイムは終わりっ」 突然の宣言に、少し焦る。
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