命懸けの伝言

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「この橋にアンタが来るのは予想がついてた。アタシをここに縛り付けるのもな。だからここに……」 中原を腕を縛っていた服が、はらりと落ちる。 「ちゃんとナイフも準備しといたんだよ」 言葉通りに、中原の右手にはナイフが握られていた。 中原はそのナイフで足の縛りも解いた。 「アタシはアンタらみたいに、人間離れした能力を持ってない。そんなアタシが、無策でアンタに挑むとでも思ったか? まさかだろ。――ぐっ」 足に刺さったナイフを抜き取り、傷口を縛って止血する中原。 俺は動けない。 すぐ目の前に敵がいるのに、見えない糸に牽制されて、俺は身体を動かす事が出来ない。 「アタシの特技は相手の行動を読む事。アタシは常に先を読んで行動してる」 止血を終えた中原は、立ち上がって俺から距離を取った。 「ついでにこの糸もアタシの特技の一つ。糸はアタシの両手で、ある程度自由に操れる。切れ味は、さっきアンタが味わった通り。アンタの周辺、およそ2メートルはまんべんなく糸を張り巡らせてる。生きてそこから出ることは、不可能なんだよ!」 中原が左手を振る。 同時に見えない糸が俺の身体を掠め、無数の切り傷を作る。 せっかくメイドに選んでもらった服が、あっという間にボロボロだ。――いや、今は服の心配してる場合じゃないか。 どうやってこのピンチを切り抜けるか。 「それじゃ、今度はアタシから『質問』だ」 「……質問タイムは終わりじゃなかったのかよ」 ひゅん 風を切る音と共に、左足が切られる。 「…………っ!」 避ける事は出来ない。 倒れる事も出来ない。 周りに糸が張り巡らされたこの状況でそんな事をすれば、あっという間に活け作りにされてしまう。 「余計な口は利くな。アタシの質問にだけ答えろ」 さっき自分が言ったのと同じような事を、今度は自分が言われた。 切られた場所も同じ場所だ。 意趣返しのつもりか。 「アンタが記憶をなくしたのは、いつ頃だ?」 記憶喪失っていうのはバレているらしい。 むしろそれがわかったからこそ、ネタばらししたのか。 「今朝。筋肉男とオールバックに会う前だ」 俺の答えを吟味するように間を置いた中原は、「嘘じゃないな」と確認してきた。
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